見極めたい、“後悔”しないためのこだわりインプラント

インプラントには低額なものと高額なものがあります。インプラントは安ければいいというわけでもないので、納得のいくものを選ぶべきです。

一九七〇年代になり、ブローネマルク博士は、一九六五年以降の五例の成績をスウェーデン国内で発表しようとしましたが大反対に合いました。
「うそを言っているのではないか」「データを捏造しているのではないか」と中傷され、学会にも参加できず、また講演をしている最中に中止を余儀なくされるなど多くの迫害を受けたのです。
一方で、インプラントの可能性を信じた多くの医師や研究者が研究を続けました。
たとえば、スウェーデンのアデル博士は一九六五年から一九八〇年まで行った一五年スタディのデータの概要を、一九八一年に学会で発表しました。
下顎に一〇一六本、上顎に九八六本のインプラントを埋入して、インプラント、ブリッジの成功率は実に九八%という衝撃的なデータを発表したのです。
これにはスウェーデンの学会が騒然となりました。
データの正当性を精査するために、スウェーデン国内の三つの大学が選ばれて教授が検証を行いました。
データの解析と実績の見聞を実施したのですが、改ざんの可能性はまったく見られないという結果を大学に報告し、最終的に大学側もデータは正しいと結論づけました。
そこからのスウェーデン政府の対応は早く、その報告を受けて、歯を欠損している人のために積極的に利用しょうとインプラント治療が保険適用になったのです。
とはいうものの、インプラント治療の初期は失敗が多く見られました。
インプラントが骨に付かずに抜けてしまったり、炎症を起こすこともありました。
しかし、徐々に成功率が上がっていきます。
そこで、スウェーデンのアデル博士は、骨の条件のいい患者に対して、インプラント埋入直後、その日のうちに歯を連結する試みも実施しました。
チタンが骨に付くまでには四~六か月かかるのですが、この場合、即日だったため四〇%はインプラント体が抜けたり炎症を起こしたりなど失敗が起こりました。
原因は、即日で歯を被せたことでインプラント体に余計な圧がかかったことや、インプラントを埋入する際、時間がかかり、骨に余計な熟がかかったために、オッセオインテグレーションしなかったことなどがわかりました。
そこで治療法を改善し、インプラント体を埋入し、三~四か月のヒーリング期間の後に、歯を装着するようにしました。
ちなみにチタンのオッセオインテグレーションが学問的に証明されたのは、一九七九年のことです。
スイスのシュレーダー教授が、骨とチタンを同時に削る技術の開発に成功し、一緒に削った断面を模本として観察したところ、骨の一部のように密着していることがわかり、ようやく証明が可能となったのです。
科学的根拠が証明されたために、海外でもインプラントに対する研究が盛り上がりを見せます。
一九八二年、カナダ・トロント大学のザーブ教授は、カナダはもとよりアメリカでもこの治療を普及させようと考えました。
しかし、アメリカでは以前のインプラント治療がことごとく失敗していたため導入に消極的でした。
そこでザープ教授は、全米の歯科大学の学長及び学部長クラスに要請し、会議に二名ずつ出席させてトロント大学のインプラント治療のデータと、アデル博士の論文を比較して、成績に差がないことを訴えたのです。
これには参加していた学者や歯科医師が驚きました。
データに改ざんがないかを再度調査し、問題なしの判断をした上で、全米でインプラント治療がスタートしたのです。
日本では、海外の状況を見た上で、一九八五年に当時の厚生省が承認し、実際には八八年からスタートしています。
私がスウェーデンのブローネマルク博士の講義を初めて受講したのは、一九八七年でした。
インプラント治療に関しては、五年ごとにスウェーデンのイエテポリ大学で世界的な学会が開催されていますが、二〇〇〇年の三五周年にはほぼ完璧に近いところまで技術が到達したことが実証される発表がされました。
治療法の開発や、オツセオインテグレーションにおける学問体系の完成を示す研究レベルの高さなどが実感させられた瞬間でした。
インプラント治療を受けるかどうかの選択条件インプラントの成績は向上していますが、いざ自分でインプラントを埋入するかどうかの選択を迫られたとき迷う方が多くいらっしゃいます。
高血圧や心臓病など手術リスクを持っていて、できるだけ麻酔や手術をしたくない方もいらっしゃるでしょう。
もちろん、現在は必要最低限の局所麻酔なのでリスクはかなり減っています。
それらを考慮した上でも決心がつかず、しかも歯をほとんど失っている方の場合は稔義歯が第一選択になります。
身体的なリスクがない方の場合は、ご自身の骨の状態から判断する方法もあります。
歯が失われた時点から骨の吸収は始まります。
総義歯でも徐々に失われますし、まして合わない総義歯を使い続けるとさらに骨の吸収が進みます。
歯があるときには噛む力がかかり骨に刺激が伝わるので、骨のリモデリング(骨再生)のサイクルが機能します。
骨は刺激がかかることで破骨細胞と造骨細胞が活発に働いて、古い骨を壊し新しい骨を作り上げていき、このサイクルにより二年かかって、全身の骨が新しくなるのです。
ところが歯を失い骨にかかる圧力や刺激がなくなってしまうと、リモデリングのサイクル機能が落ちていき、骨を破壊する細胞のほうが作る細胞よりも機能を充実させてしまい、やがて骨は生まれ変わることも少なくなり吸収されていきます。
たとえば、人間は歩かなくなると足が弱ってくるのと同じことです。
立って歩くときに重力がかかり、この際骨の中を電気信号が流れ、これにより、大腿骨の中で骨のリモデリングのスイッチが入ります。
歩くことで、大腿骨の古い骨が壊され、新しい骨が作られるので、骨は二年で新しいものに変わっていくことができるわけです。
これがうまく機能している限り、二年以上前の古い骨は身体からなくなっています。
歩かなくなり電気信号による刺激が大腿骨に伝わらなくなると、リモデリングのレベルが下がってくるので、骨は弱くなります。
使わなければ筋肉も弱くなり、ついには歩けなくなってしまうのです。
インプラント治療は、顎の骨がしっかりとあることが理想です。
骨が全部しっかり残っていて、しかも歯がまったくないという人は、インプラント治療しやすい症例です。
その際、歯以外はどこもトラブルがなく、健康であるというのも好条件になります。
しかし、こういう歯科医にとって都合のいい患者さんは、それほど多くはありません。
すでに骨の吸収が始まっていたり、高血圧、糖尿病といった生活習慣病をお持ちだったりと、さまざまな条件を持ちながら治療をするという方が大半なのです。
これらを解決しながら、あるいはリスクを軽減させる方法を模索しながら治療を実施します。
骨の質によっても、インプラント治療の条件が違ってきます。
骨は、表面の硬い皮質骨と真ん中の軟らかい海綿骨からできていますが、海綿骨があまりにも軟らかかったり、骨租しょう症のようになっているケースもあります。
あるいは、表面の硬い皮質骨が非常に薄くなっているという症例もあるのです。
反対に軟らかい海綿骨が少なく皮質骨が厚くなっていて、削っても血液が出ないという方もいらっしゃいます。
血液がなければ骨ができないので、このようなケースでは、オッセオインテグレーションが獲得しにくくなります。
これらの難しい条件では、従来はインプラント治療が難しいといわれていたのですが、最新の技術開発により可能になっています。

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